- #後遺障害
症例32 頚椎捻挫後に顕在化した椎間板ヘルニア症例 ― 自賠責後遺障害認定の再考
事案概要
鑑定対象者:40代男性
自動車追突事故(信号待ち停止中に後方より追突された)
症状及び診療経過:事故翌日、頚部痛と両上肢のしびれを主訴に整形外科を初診。レントゲンでは明らかな外傷性の所見は指摘されず、外傷性頚部症候群の診断で投薬治療を開始した。
症状が改善しないため、約1週間後にMRI検査を行い、頚椎椎間板ヘルニアを指摘された。
両手指のしびれ・握力低下を残し症状固定となった。
後遺障害認定結果:画像上で変性は認めるが事故との因果関係を否定され、非該当と判断された。
依頼目的:後遺障害該当性について評価希望。
★ポイント★
頚椎椎間板ヘルニアが外傷性のものと評価できるか。
外傷性ではない場合、ヘルニアと症状との整合性はあるか。
検討結果
(A)画像所見と症状との整合性
① 事故から約1週間後のMRI
・第4/5頚椎(C4/5)椎間板が後方へ突出し、頚髄を圧迫している。
→C6髄節障害を生じる
→C6髄節障害の領域
・頚髄内にsnake eye signと呼ばれる輝度変化を認め、これは脊髄の慢性的な圧迫によって出現する所見であるため、事故以前から生じていたものと判断される。
→事故前には症状がなかったことから、事故を契機として脊髄症状を発症したものと考えられる。
項目 |
内容 |
支配筋 |
上腕二頭筋、腕橈骨筋、手関節伸筋群など |
支配皮膚(デルマトーム) |
前腕橈側~母指 |
反射 |
上腕二頭筋反射、腕橈骨筋反射(低下) |
(B)後遺障害等級の検討
本件事故後から頚部痛及び両上肢のしびれが生じ、症状固定まで一貫して症状が持続していることがカルテから確認できる。
また、両前腕~手指のしびれと握力低下の影響で「箸が使えない」「ものを落としてしまう」「パソコンのタイピングがうまくできない」といった障害が生じ、日常生活や就労において支障を来たしていることが確認できる。
したがって、「通常の労務に服することはできるが、せき髄症状のため多少の障害を残すもの」として、後遺障害等級第12級12号に該当する可能性はある。
結論
頚椎椎間板ヘルニアは外傷性のものではないと考えられるが、事故以前は無症状であったことから、本件事故を契機として、ヘルニアに伴う症状を発症したものと考えることができる。
第12級13号に該当する可能性があると判断。