- #後遺障害
症例31 バイク事故に伴う外傷性腱板損傷 ― 急性期MRI所見による証明と後遺障害等級評価
事案概要
鑑定対象者:50代男性
バイクでの転倒事故
症状及び診療経過:頚部、左肩、左膝などの痛みを訴え救急搬送される。
レントゲンにて明らかな骨折や脱臼は認められず、左肩打撲症の診断にて投薬治療を開始。
痛みが改善せず、事故から約2週間後にMRI検査を行い、左肩の腱板損傷を指摘される。
投薬治療とリハビリを継続したが、左肩痛と左肩関節の可動域制限を残し症状固定となった。
後遺障害認定結果:画像上で腱板の変性は認めるが、腱板損傷及び事故との因果関係を否定し、第14級9号と判断された。
依頼目的:外傷性腱板損傷の証明、上位等級該当可能性について評価希望。
検討結果
★ポイント★
画像所見の経時的変化で腱板損傷を外傷性所見と評価できるか
(A)受傷機転
転倒時、左側に倒れ左半身を路面に打ち付けている。
左肩に外力を受けたことが示唆され、腱板損傷の受傷機転として整合性はある。
(B)症状の一貫性
受傷直後から左肩痛が生じ、症状固定まで一貫して症状が持続していることがカルテから確認できる。
(C)画像所見
腱板損傷はMRI画像で評価する。
① 事故から約2週間後のMRI
・腱板損傷を示唆する所見
・周囲の水腫もしくは血腫を示唆する所見
② 事故から約6ヶ月後のMRI
・腱板損傷を示唆する所見
・周囲の水腫もしくは血腫を示唆する所見は消失している
画像①②のMRIを比較することで、
・画像①:腱板損傷が生じその時に血腫または水腫が生じた急性期の画像
・画像②:外傷から時間が経過した慢性期の画像
と判断することができる。
また、画像①撮影時に近い日時に受傷した外傷性のものと判断することができ、本件事故によって受傷したものと考えて矛盾はないといえる。
結論
・MRI画像から、事故によって生じたと考えられる外傷性腱板損傷の所見が指摘できる。
・症状の存在を証明する他覚的所見が認められることから、第12級13号に該当する。
※本症例の腱板損傷は比較的小さく、整形外科医でも肩関節を専門としない医師では正確に判定できない可能性がある所見であったことが、後遺障害認定結果に影響を及ぼした可能性が考えられた。
急性期(受傷早期)の症例に特徴的な所見が得られることがあるため、事故後、強い痛みが続く場合には早めにMRI検査を受けることをお勧めします。また、経時的にMRI検査を受けることで、経時的変化を捉えることができ、外傷性の所見であることを支持する情報が得られる場合もあります。