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事例7 意思能力® 公正証書遺言に関わる事案
某地方で食品製造企業を経営するA氏には、再婚した現在の妻と死別した前妻との間に生まれた実子(男性:長子)および現妻と前夫との間に生まれ養子縁組をした次子(男性)の同居家族がいた。
A氏の後継者として専務取締役に就任し会社経営に携わっていた長子は、経営方針をめぐりA氏と対立したことを機に辞任し、A氏と別居することになった。しかし、A氏は、長子が辞任後も頻繁に長子に事業上の相談を続け、事実上、経営に参加させていた。
その後もA氏と長子の親子関係に大きな変化はなかったが、A氏が74歳の時にA氏は脳梗塞を発症し、以後リハビリのため、専門医療機関に長期入院となった。A氏の介護は現妻が行っていたが、当時は妻も体調不良気味で、満足に介護ができず、加えて水頭症の発症等A氏の経過も芳しくなく、痴呆症状も出現するようになった。
結局A氏は自宅療養の後、介護施設に入所することになった。自宅療養中は、妻も体調不良が続いていたことから、長子が主にA氏の世話を行っていたが、介護施設に入所してしばらくしたころ、A氏は突如別の施設へ移ることとなった。長子はA氏の移転については全く知らされておらず、後日、次子からA氏は別の施設に移し、現在はA氏の妻(次子の実母)とともに次子が世話をしている旨の連絡があった次第。以後もA氏と妻の行方については長子が知らぬまま1年余りが経過した。
A氏が脳梗塞を発症し、その後長期の入院状態となってからも、会社は専務取締役に復帰した長子が、事実上の最高経営責任者として取り仕切っていたが、ある日、会社の顧問弁護士より、長子に対し、取締役の解任と次子の代表取締役就任の通知がなされた。
次子は大学卒業後、フリーター状態で、会社経営には全く関わっていなかったが、会社の株式の殆どをA氏が所有し残余の1割程度の株式を妻が所有する状態であったため、長子が不知の間に臨時株主総会が招集され、前期の決議がなされたものであった。
それから1年弱経過した時期にA氏は死去したが、A氏の死後、顧問弁護士よりA氏の公正証書遺言の存在の事実が長子に告知され、その結果、A氏所有の株式はその全てを次子に相続させることが判明した。
しかしながら、公正証書遺言が作成された時期には、A氏の認知症は重篤な状態であったことは明らかで、当該行為を行う意思能力がA氏に存在したことは認めがたく、また臨時株主総会が開催された経緯にも、その成立の有効性に多大な疑義があったことから、当時のA氏の意思能力について、知人の弁護士を介して弊社へ依頼となった。
弊社には、公正証書が無効であるとして相談があった事案だが、遺言作成よりも以前の株主総会における議決の時点で既に明らかな脳萎縮を認め、意思能力においても無効であるということが放射線科専門医による画像鑑定で判明し、更に臨床専門医による意見書を作成した。
以上