事例10 【真実を読む】増え続ける労災事案
弊社への鑑定依頼ですが、今年は特に労災事案のご相談を多くいただいております。
そのほとんどは、外国人案件者によるものです。
工場や建築現場などブルーカラーと言われる類の業種で特に多発している印象です。
今回は、そのうちの1事案を症例としてご紹介いたします。
【概要】
急性期脳梗塞を発症した60歳代の元従業員から、発症の原因は長時間労働によるものと損害賠償請求された事案。
弊社へはこの企業側の弁護士様よりご相談を頂きました。
案件者には既往として「高血圧・糖尿病・脂質異常症」が挙げられておりました。
また、嗜好情報には「喫煙・飲酒」との情報。
まず初めに行った放射線科医による画像鑑定では、「多くの陳旧性微小脳梗塞と急性期の右後大脳動脈閉塞所見」を認めました。
その後、脳外科臨床医へ相談したところ、以下の見解が提示された。
- 高血圧は薬物により正常範囲に調節されており、これが単独で脳梗塞に寄与した割合は低い。
- 糖尿病は薬物コントロールされておらず未治療であった。また、本疾患は単独で脳梗塞の発症リスクを2~4倍高める危険因子である。従って脳梗塞に寄与した割合は低くはない。
- 脂質異常症は、アテローム血栓性脳梗塞において、上記2疾患と並ぶ主要な危険因子である。実際の値をFreidowald式にあてはめて検討し、患者の脂質異常症が単独で脳梗塞発症に寄与した割合はそれほど高いとは言えない。
参考文献)北川泰久ら監修.脳血管障害診療のエッセンス.東京:日本医師会;2017
【見解】
2013年に脳卒中の危険因子をスコア化した報告された(Stroke2013;44:1295-1302)。これに年齢、性別、喫煙情報、BMI、血圧、糖尿病らをこれにあてはめると、43点であり、患者の10年間の脳梗塞、脳出血といった脳卒中発症率は20%を超えるほど高い。危険因子が年齢と性別のみの場合と比較しても発症率は7~10倍であった。また、脳梗塞発症時の患者の血管年齢は90歳以上であった。
よって、患者には複数の危険因子を有し脳梗塞を発症する危険性の高い状態であると見解づけた。
このように画像の所見があり、脳梗塞を発症した事実は否定できなかった場合においても、文献や報告などによるエビデンスで事象を数値化し証明することができる場合があります。しかし、どの医師も同じように一般の臨床においてこれらを用いている訳ではありません。弊社の顧問医達は日々研鑽を重ねて厳正中立な見解を述べています。
意見書前の相談も承ります。是非、ご相談ください。