医療過誤

  • #死亡原因

事例27 Ai(オートプシー・イメージング=死亡時画像診断)が鑑定において決め手となったケース

事案の概要

鑑定対象者:当時90代 女性

対象者は、高齢なこともあり日頃から肺炎を繰り返していました。
ある日、自宅で家族が介助しながら昼食をとっていた際、むせてしまい、その後発熱。
近医を受診し、『誤嚥性肺炎』の診断で入院となりました。

入院後、数日の絶食を経て食事を再開したところ嘔吐してしまい、心肺停止。
その後死亡が確認された事案。

当時の死亡診断書の死因欄には『誤嚥性肺炎』と記載され、病院からも死因は『肺炎』であると家族は説明を受けたそうです。
しかし、食事介助後すぐに急変したことから、家族は病院の説明に疑問を持ち、
食事もしくは嘔吐物による窒息ではないか?と考え、死亡後にAi(オートプシー・イメージング=死亡時画像診断)を実施しました。

検討のポイント

死因は『誤嚥性肺炎』なのか?
食後嘔吐による呼吸困難からなる『窒息』なのか?

検討内容

主気管支内の貯留

主気管支内の貯留

Ai画像の鑑定結果では、
死後CTにより、『誤嚥性肺炎』は認められたものの、死亡にいたるほど重症ではなかったとの見解でした。

また、左肺に広範な肺炎があるため、異物により窒息、右主気管支に狭窄・閉塞が生じ、呼吸困難から心肺停止に陥ったと総合的に判断されました。(右図参照)

 

さらに、カルテには以下の記載も認められました。
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誤嚥性肺炎の診断で入院。数日間の絶食の上、抗生剤投与を行った。
その後の血液検査・胸部X線では一部悪化を認めたが、症状の改善があったことから、絶食をやめ、介助による昼食を摂った際にムセがあり吸引を行い、酸素飽和度の低下なく終了。
その後、嘔吐し、心肺停止。心臓マッサージを行ったが蘇生せず、死亡。
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まとめ

本件では、病院側の説明がご家族の認識と齟齬があったため、ご家族がAiの画像撮影を希望したことで実施されました。
鑑定においても、Ai画像の結果が鑑定の決め手になった事例です。

Ai画像は、死因究明においては重要な検査ですが、医療事故調査制度では、死亡解剖やAiの実施は義務づけられておらず、医療機関が必要かどうかを検討したうえで、ご遺族の同意を得て実施するものです。

しかしながらAi画像については、世間一般に広く知られる検査とは、言い難いのが現状です。
本件は、ご家族が偶然にもAi画像の存在を知っていたからこそ、実施できたケースです。

今後は、死因究明には、死亡解剖と併せてAi画像の重要性を認識しておく必要があると思われます。

また、医療機関によっては、自施設では解剖やAi撮影が実施できない場合もあるため、近隣の医療機関の協力を得て、他施設に搬送して実施することにも留意しておく必要があります。