医療過誤

事例26 小児期の矯正歯科治療、抜歯の治療内容が変更になったケース

事案の概要

鑑定対象者:当時30代 男性(治療開始時10代前半)

対象者は中学生から矯正治療を開始。

当初の治療計画では3年の治療期間と説明されていたが、10年以上が経過しても治療が終了しなかった。
さらに治療経過では説明の無かった抜歯も行われ、他の歯科医から治療内容に疑問を呈されるに至った。
抜歯の説明義務違反や治療内容に医療上の問題点はあるのか?

検討のポイント

第3大臼歯(親知らず、以下「8番」という。)の抜歯から第2大臼歯(以下、「7番」という。)の抜歯に治療方針を変更した判断に、医療上の問題点はあるのか。

検討内容

治療計画書に「治療中もしくは治療後に8番の抜歯が必要であること」ならびに「過度の身体の成長がある場合には変更の可能性があること」などの記載があったことが確認された。
歯科矯正学文献によると、矯正歯科治療で便宜抜歯をする場合、通常は、小臼歯(第1小臼歯4番、第2小臼歯5番)を選択するのが一般的である。

7番の抜歯にあたっては、本来、家族歴を把握し、下顎の成長量や成長方向を評価しておくべきであったが、診療記録上にその記載がないことや、7番に何らかの問題があって、7番を抜歯し、8番を残して利用する方が良いとする根拠を用意し、患者と保護者に十分な説明を行い、同意を得ることが適切であったと考えられる。

また治療計画変更における下顎の成長量や成長方向を評価にあたっては、家族歴の評価と共に側面頭部エックス線規格写真撮影や8番に対する歯科用CT(コーンビームCT)撮影などを行い評価することが適切であったと考えられる。

まとめ

当初の治療計画の8番の抜歯から、7番の抜歯に変更したことは、他の矯正歯科文献からすると必ずしも誤った治療とまで言えない。

しかしながら、治療計画の変更にあたり、患者が未成年者であることから、保護者への治療計画変更の十分な説明と同意がなかったことが重大な問題であり、また治療計画の変更にあたり、7番抜歯の根拠が不足していたことや、患者本人へのきめ細やかな配慮があった方が良かったと考えられる。