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事例19 赤ちゃんに発生した硬膜下血腫。画像所見は虐待の証拠になるか?

【事案の概要】

鑑定対象者:Mちゃん  生後3ヶ月 女児
ご依頼者:Mちゃんの母親A氏の弁護士

Mちゃんが繰り返す嘔吐のため救急搬送された病院にて急性硬膜下血腫と診断。
入院中に状態悪化し、心肺停止。蘇生されるが低酸素脳症にて後遺症が残存した。

Mちゃんが搬送された病院からの通報により、Mちゃんの急性硬膜下血腫がA氏からの虐待によるものはないかと疑われ、A氏は逮捕された。

※A氏には学生時代にパニック障害の既往があったが、治癒している。
※Mちゃんには痣や骨折など、その他身体的虐待を疑う所見は認められなかった。

A氏の弁護士より、Mちゃんの頭部画像所見について、A氏の虐待による証拠となるのか、画像鑑定のご依頼となった。

【検討のポイント】

  1. 急性硬膜下血腫はいつ頃生じたものか。
  2. 急性硬膜下血腫は故意の虐待によるものか。

【鑑定結果】

入院時の頭部CTから、急性期の硬膜下血腫所見と慢性期の硬膜下血腫所見を認めた。
その後に撮影された頭部MRIでも新旧の硬膜下血腫が混在する所見を認めた。
皮下血腫・頭蓋骨骨折などの所見は認められなかった。

 

以上より、shaken baby syndrome(乳幼児揺さぶられ症候群:SBS)※を疑うという画像診断となった。
乳幼児揺さぶられ症候群は故意の虐待により生じる例もあるが、月齢にそぐわない育児行為や遊び、無意識のとっさの行動によって発生した例もあるため、本件でもA氏による故意の虐待行為と断定することは困難である、との内容にて鑑定報告書を作成した。

※shaken baby syndrome(乳幼児揺さぶられ症候群:SBS)
乳幼児は頚部の筋肉が未発達のため、激しく揺さぶられると脳が衝撃を受けやすく、脳の損傷による重大な障害を負うことや、場合によっては命を落とすことがある。

以上